各種お問合せは|TEL.0494-53-1280 FAX.0494-24-9633|〒368-0046 埼玉県秩父市和泉町20番

花輪理事長の独り言

【埼玉】「進行がん撲滅」を目指した検診率向上、検診方法再検討の取り組み‐花輪峰夫・秩父病院理事長に聞く◆Vol.3

自治体が実施している5がん検診の受診率が全国平均を下回っている埼玉県で、秩父病院理事長の花輪峰夫氏は秩父地域のがん検診受診率の向上と進行がん撲滅を掲げ、啓発に力を入れている。活動の背景や内容について話を聞いた。(2023年1月19日オンラインインタビュー、計3回連載の3回目)

――「進行がんの撲滅」を掲げて活動を始めた背景を教えてください。

外科医として50年診療してきた中で非常に残念だと感じているのは、進行がんの多さです。当院では年間、大腸がん手術を約40件、胃がん手術を約20件行っていますが、このうち7割程度が進行がんです。初期のがんは痛みがないどころか、何も自覚症状がないことがほとんどで、自覚症状が出る頃にはすでに進行しています。

がんは早期治療することができれば、生存率が大幅に上がります。検査技術も向上しており、がんの早期発見による進行がんの撲滅は医学的に考えても、夢の話ではありません。

しかし、大きな問題の一つは、がん検診の受診率が低いことです。がん検診受診率の向上は全国的な課題ですが、埼玉県の5がん検診の受診率は全がん種で全国平均を下回っています(2019年国民生活基礎調査)。2020年度の市町村別がん検診受診率によると秩父地域では皆野町、小鹿野町、横瀬町が県平均を上回っている一方で、秩父市と長瀞町では多くのがん種で県平均を下回っている状況です。

特に秩父市の大腸がん検診受診率は県内最低で、わずか3%です。全国で最も罹患数が多いがんは大腸がんで、死亡数は女性で1位(2019年全国がん登録罹患データ、2021年人口動態統計がん死亡データ)。埼玉県でも同様の傾向です。大腸がん検診に用いられる便潜血検査はコストも低く、方法も簡単です。40歳以上の全住民を対象に年1回便潜血検査を行うことがかなえば、死亡数の減少に貢献できるでしょう。

がんは2人に1人が罹患するといわれている疾患です。COVID-19の感染拡大には日本中が恐怖を抱きましたが、死亡率で考えれば、がんはその比ではありません。まずは医師や医療従事者に進行がんに対する危機感と、がんを早期発見することの重要性を強く感じてほしいと強く思っています。ちなみに、日本のがん検診の受診率はアメリカ、イギリスが約80%であるのに対し、40%です。

――がん検診の方法についても問題点を指摘されていますね。

がん検診の目的はがんの早期発見と死亡率減少ですが、国が推奨している検診方法は、早期がんを見つけるための最新のエビデンスを用いているとは言いがたいのが実情です。

肺がんを見つけるにはCT検査が優れていますが、検診の方法は何十年も変わらずに胸部X線検査が推奨されています。CT検査を検診で取り入れるとなると、コストや医療設備の面で課題があるのかもしれませんが、胸のX線写真一枚で早期がんを見つけるのは、相当な難しさがあるといえます。

胃がん検診の方法は、胃部X線検査か、胃内視鏡検査です。胃部X線検査で早期がんを見つけるのは至難の業でしょう。一方、胃内視鏡検査は精度も画像の質も高く、細胞をとることもできます。胃内視鏡検査に絞れば、早期がんを発見できる確率は上がるのではないでしょうか。

胃がんの原因の一つがピロリ菌感染であることは明確に分かっています。胃がんリスク検診(ABC検診)でリスク分けを行った上でリスクのある人を対象に内視鏡検査を実施すれば、効率的な検診になるのではないでしょうか。ABC検診の導入については当院の臨床研究として実施し、自治体や医師会に提案を行った過去がありますが、残念ながら実現には至りませんでした。

新たに有効な検診方法が出てきたとしても、明確なエビデンスを出すには何十年という年月が必要なことは少なくありません。その間、医学の進歩を検診に生かさずにいていいのか。非常にもどかしさを感じています。国は「科学的根拠に基づくがん検診の指針」を策定し、市町村に検診を推進させています。私にはどうしても科学的根拠とは思えません。

――進行がんの撲滅に向けてどのような活動をしていますか。

当院の坂井謙一院長は現在秩父郡市医師会の理事を務めているため、2022年に医師会の理事会で検診方法の再検討を議題に上げてもらいました。2023年中に医師会で講演会を行い、理解を求めたいと考えています。年内には医師会で内容をとりまとめ、秩父地域の自治体や議会への提言につなげてほしいですね。まずは秩父市に「がん検診の改善と受診率の向上」を提言すべく、現在多くの賛同者を募っています。提言の内容としては具体的に、がん検診の改善に向け、(1)胃がん検診の ABC 検診への変更(2)大腸がん検診(便潜血検査)の特定健康診査・健康診査への追加(3)便潜血検査キット配布施設の増設(管内医療機関、調剤薬局、公民館など)(4)便潜血検査のための市予算増額――を盛り込む予定です。受診率の向上を目的としては、秩父市や秩父市立病院への専門部署設置、市の広報・秩父FMラジオの活用、医師・保健師・がん経験者による講演実施などを要望したいと考えています。

状況の改善を目指し、まずは秩父地域から、「がんは早く見つければまず死なない」という認識を市民、町民に広めていきたい。がん検診の受診率を上げるために、医師、自治体、住民全てでがんに対する意識を高めることが必要です。また、早期発見のためにはがん検診の精度が高いとはいえず、検診方法を検討する必要があることについても説いていこうと、ブログやFacebookでの発信にも力を入れています。

――取り組みへの意気込みを教えてください。

医師になってから50年たち、一つの節目として2022年3月に秩父病院の院長を退任し、理事長として病院経営に専念することにしました。そうはいっても、半世紀の医師人生に区切りをつけるのは気持ちの上でも難しいと感じたため、同年4月より東海道五十三次のひとり歩き旅に出ました。いわば、医者の卒業旅行です。

当初は医師を引退後、余暇を楽しむつもりでいましたが、埼玉県の地域医療を守る会と進行がん撲滅の取り組みは、医師としてやり残した宿題だと感じています。どちらも県内での活動にとどまらず、厚労省にも訴えていきたいです。実を結ぶまでは時間がかかると思いますが、少しずつ前に進めていきたいと思っています。秩父が発端となり、この取り組みが厚労省に届き、全国に医学の進化に即応した「科学的根拠に基づいたがん検診」が広まること、そして国民がCOVID-19以上に、がんに危機感を持ち、受診率が向上することを願っています。

東海道五十三次歩き旅のスタート地点

 


【埼玉】地域医療を担う医師育成のため「秩父花仁塾」を開塾‐花輪峰夫・秩父病院理事長に聞く◆Vol.2

県西部に位置する秩父病院は、秩父市、横瀬町、皆野町、長瀞町、小鹿野町の1市4町からなる秩父地域の医療で中核的な役割を果たしている。医師不足が深刻な中、地域医療は何を目指していくのか、地域医療を担う人材をどのように育てていけばよいのか、同院理事長の花輪峰夫氏に話を聞いた。(2023年1月19日オンラインインタビュー、計3回連載の2回目)

 

――医師不足地域として目指すべき地域医療の姿を教えてください。

秩父地域は埼玉県の面積のおよそ4分の1を占める一方で、人口は10万人弱程度です。20年ほど前までは、地域の病院や診療所が連携して秩父全体で総合病院化することを目標に掲げていました。当院も開放型病院として、開業医の医師が当院の手術室スタッフとともに手術を行うといった取り組みを実施してきました。

ところが医師不足により病院が減少し、現在、秩父地域の産科医療機関は1施設、二次救急医療機関は3施設のみ。三次救急医療機関はありません。さらに医療の専門化・細分化が進んだことで、秩父で地域完結医療を目指すのは残念ながら現実的ではなくなりました。

県では2018年、脳梗塞患者をいち早く治療につなげるために、埼玉県急性期脳卒中治療ネットワーク(Saitama Stroke Network:SSN)の運用をスタートしました。意識障害など脳梗塞の疑いがある場合、救急要請を受けた救急隊は急性期脳梗塞治療が可能な病院に直接搬送を行っています。従来は救急要請を受けた場所の近隣病院に運んでから専門病院に搬送するプロセスをとっていました。秩父地域に対応可能な医療機関はないため、専門病院へスムーズに搬送できるようになったことは、患者に大きなメリットがあります。最近では、埼玉県大動脈緊急症治療ネットワークも構築しています。

秩父地域には心筋梗塞の専門治療を行うことのできる医療機関もないため、心筋梗塞についてもSSNと同様のシステムが必要です。これについても県知事に要望をしました。

医学の進歩に従って地方の医療機関では対応が難しいケースが増えており、医療の集約化・効率化は受け入れていかなければなりません。秩父病院を2011年に建て替えた際には、このような理由から患者を早期に専門病院へ運べるよう、ヘリポートを併設しています。地域でできる限りの治療は行うことに変わりはありませんが、患者が享受する医療に地域格差が生じないよう、専門病院へスムーズに搬送できるシステムの整備に注力する必要があります。

 

――医療の専門化・細分化が進む中で、地域医療を担う人材育成についてはどのように考えていますか。

現在の医師臨床研修制度では、医師免許を取得した後、2年間の初期研修を実施、後期研修では3年間、基本領域の専門医資格取得を目指し、その後サブスペシャルティー領域の専門医を取得するにはさらに3年間が必要です。医療の専門化・細分化により、救うことのできる患者が増えたことは言うまでもなく、否定するつもりはありませんが、「臓器をみて人をみず」という医師を増やすきっかけにもなってしまうのではないかと危機感を抱いています。地域医療の現場では、専門領域外であっても患者への対応が求められるため、幅広い領域の知識や技術の習得が求められます。

そこで当院で地域医療を担える医師を育てるべく、吉田松陰の松下村塾になぞらえ、2015年より花仁(かじん)塾を開塾しました。若手医師に対する「医者としての教育」は地域病院の役割だと思っています。

 

――花仁塾での取り組み内容を教えてください。

秩父病院で初期研修を行った医師を年に2回ほど集めて、私を含めて当院のスタッフが講義を行ったり、懇親会を開いてバーベキューをしたりして交流を深めています。

入塾の資格は、「志のある人」。初期研修の際に花仁塾の説明と勧誘を行っており、全ての研修医が加入しているわけではありませんが、現在は114人が登録しています。

キャリアプランや医局の内情、これからの人生など若手医師に悩みはつきものですから、どのような相談にも乗るようにしているほか、当院や秩父郡市医師会の症例検討会にも参加を促しています。

また、腹腔鏡下手術の普及により開腹手術や縫合の経験がない外科医が増えていることにも危うさを感じており、手術中に急きょ開腹が必要となった症例にも対応できるよう、教育に力を入れています。

花仁塾での懇親会の様子

 花仁塾はコミュニケーションを重視しているためオンラインで実施するわけにもいかず、COVID-19が流行してからは中断が続いていますが、近いうちに再開したいと考えています。2022年3月に院長を退任して臨床から手を引いたので、どのようにして若手医師への教育機会を確保するか、検討しているところです。

地域医療に魅力を感じてもらい、担い手となる医師を育成することが花仁塾の目的ですが、地域医療という枠を超えても、総合的な医療知識・技術を身につけることは医師として重要です。例えば飛行機に乗っていて、「お客さまの中にお医者さまはいらっしゃいますか」と呼びかけがあったときに手を挙げる医師はどれほどいるでしょうか。自身の専門分野の知識や経験を深めるあまり、基本的な処置を忘れてしまっている医師は少なくありません。専門領域外の医療を求められたときにも自信をもって手を挙げ、臓器だけでなく全身、そして人をみることのできる医師に、被災地や戦地など医療機器が使えない中でも命を救うことができる医師に育ってほしいですね。


【埼玉】「埼玉県の地域医療を守る会」設立、奨学金返済免除病院の民間病院追加を提言‐花輪峰夫・秩父病院理事長に聞く◆Vol.1

県内の医師不足地域で勤務する医師を中心に結成された「埼玉県の地域医療を守る会」が2022年11月、医師育成奨学金の免除指定病院に民間医療機関を追加することを求めて大野元裕県知事に要望書を提出した。同会の取り組みや発足の背景について、代表を務める花輪峰夫氏(秩父病院理事長)に話を聞いた。(2023年1月19日オンラインインタビュー、計3回連載の1回目)

秩父病院理事長・花輪峰夫氏

――「埼玉県の地域医療を守る会」を発足するきっかけとなった出来事を教えてください。

埼玉県には、県内出身の医学生や指定大学の医学生を対象に埼玉県医師育成奨学金を貸与する制度があります。同制度では医師国家試験に合格後、通常は9年間、県内で医師不足が顕著だとして定められている特定地域の公的医療機関や特定の診療科(産科、小児科、救命救急センター)で勤務すれば奨学金の返還が免除されます。

なぜ公的医療機関に限定しているのか。疑問に思い、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行前の2019年、秩父郡市の有識者が集まり定期開催しているちちぶ医療協議会で埼玉県医療人材課の担当者に質問したところ、後日、書面回答が届きました。回答では、同制度の原資が県民の税金で賄われていることや、公的医療機関は地域医療の中核的機能を果たしており、不採算医療を担っていることが理由だと記載されていました。

これには到底、納得できませんでした。民間医療機関であっても不採算医療である救急医療や若手医師の教育、COVID-19の対応など、地域医療の中核的機能を積極的に担っているところは少なくないはずです。医師不足地域の民間医療機関では特に、医師確保が喫緊の課題です。確保できなければ診療科や診療時間の縮小、最悪の場合は閉院という選択を取らざるを得ません。埼玉県は10万人あたりの医師数が全国で最も少なく、県内のおよそ半分の地域で医師が不足していることからも、大きな問題だと感じました。

COVID-19の影響で数年間動きがとれていませんでしたが、2022年6月、県知事に直接掛け合おうと県の保健医療部を訪問しました。要望を伝えるには、医師会など何らかの団体を通す必要があるとの返答があったため、同志を増やすことを決意しました。

若い医師の教育・研修を担っている施設や地域医療に貢献していると自負している施設であれば、要望に賛同してもらえるのではないかと思い、1日あたり約3人、医師不足特定地域で救急医療を担っている民間病院を中心に、およそ10日間で35施設へ電話をしました。結果、全ての施設で賛同を得ています。

丸木雄一埼玉県医師会副会長や県議会議員の先生方にも賛同いただき、同年11月、提言の場にこぎつけることができました。

こうした流れで「埼玉県の地域医療を守る会」を設立しました。2023年3月までは私が暫定的に代表を務め、その後賛同いただいた先生方と相談して、会の正式な名称や代表者を決める予定です。

――具体的にはどのような提言を行ったのでしょうか。

具体的には、民間医療機関であっても、(1)協力型臨床研修病院である(2)日本専門医機構が指定する19領域の学会専門医修練施設の関連病院または協力病院である(3)救急告示病院である(4)一定数以上の分娩実施施設(診療所を含む、知事が指定した施設)である(5)その他、知事が指定した病院である――の5つの要件のうち1つでも満たせば奨学金免除指定病院とすることを要望しています。また、特定地域は将来的に生活圏や医療機能分担を配慮して決めるよう求めました。

奨学金制度の目的は、医師不足地域・診療科の医師を確保することです。公的医療機関と民間医療機関が共に地域医療を支えていく中で、実態にそぐわない不平等は撤廃してほしいと強く思っています。

――卒業後の勤務が公的医療機関に限られることは、民間医療機関の経営としての問題だけでなく、現場の医師にとっても弊害となりそうです。

埼玉県以外では、原則公的医療機関としつつ特例を設けて民間医療機関での勤務を認めている都道府県もあります。若い医師の成長を考える上でも、選択肢を広げるべきでしょう。

また、奨学金の返済が免除された後も地域に定着してもらうためには、若い医師のモチベーションを保つことが大切です。専門医取得が可能な環境や指導体制の整備が求められます。

――守る会の会員の内訳を教えてください。

賛同いただいた医師からの紹介などもあり、現在は46の医療機関が会員となりました。内訳は、特定地域のうち熊谷・深谷・寄居地域から11施設、行田・加須・羽生地域から3施設、秩父・小鹿野・皆野・長瀞・横瀬地域から7施設、東松山・嵐山・小川・川島・滑川地域から5施設、本庄・美里・上川・上里地域から9施設、久喜・蓮田、・幸手・白岡・宮代・杉戸地域から3施設。そのほか特定地域以外で8施設です。産科医院や療養型病院も一部含まれています。

県知事への提言という第一の目的は達成しており、会員増に向けて積極的な取り組みを継続しているわけではありませんが、仲間を増やしていけるよう呼びかけを行っています。

2022年11月に要望書を県知事に提出

――現在はどのような活動をしていますか。

2022年12月には自民党県議団にも要望書を提出しました。啓発を目的として、Facebookや秩父病院のWebサイトに設置しているブログでも情報発信しています。

県議会の議題に上げてもらうために、やれることはやったつもりです。しばらくは経過を待ちたいと思います。埼玉県医師育成奨学金制度で公的医療機関と民間医療機関に不平等が設けられている問題が審議され、条例の改正に結びつくことを願っています。

公的医療機関と民間医療機関の不平等は、埼玉県のみの問題ではありません。自治医科大学では授業料返済免除の条件として、義務年限の期間、出身都道府県の知事が指定する医師不足地域などの医療機関で勤務することが求められていますが、対象の医療機関は公的医療機関に限定しています。

現在は県内の奨学金制度の変更を求めて会の名称を「埼玉県の地域医療を守る会」としていますが、全国の地域医療を守るために活動していきたいですね。県知事への要望より時間も労力もかかると覚悟していますが、いずれ何らかの機会を設けて、厚生労働省にも要望を提出したいと考えています。


『がん死の撲滅 6』花輪理事長の独り言(第23報)

『がん死の撲滅』
吉田松陰の言葉に「夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に成功なし、故に、夢なき者に成功なし」という名言があります。松陰に私が勝っているのは、年齢だけですが、『夢』だけは私も見ます(笑い)
ともかくやってみることにしました。
以下の如く、秩父市長と市議会議長に提言することにしました。
知人やFBの友達に、メッセンジャー・メールで「賛同して頂きたい」と呼びかけようと思っています。
提言に際し、賛同者の名簿を添えるつもりです。
以下をご覧いただき、ご賛同頂けた場合は、メッセンジャーで『賛同の意思』を頂きたく存じます。ご賛同頂ける場合は、氏名、できればお仕事、役職等もお願いできると幸いです。
*情報は、今回の秩父市への提言以外には使用致しませんことをお約束いたします
はじめに
日頃より、秩父地域医療の充実、特に秩父市立病院の救急医療に対する貢献に、一市民と
して、一医療者として、心より感謝申し上げます。
日本では、1年間で約 100 万人が、がんに罹患し、約38 万人の方が「がん」で亡くなっ
ています(国立がんセンター・最新統計) *死亡率 38%
一方、新型コロナウイルス感染症の約 3 年間の累計感染者は 3287 万 2969 人、死者数は
7 万 185 人(2023 年 2 月 9 日現在)であります。 *死亡率 0.21%
日本人は一生のうち、2 人に 1 人はがんと診断され、男性は 4 人に 1 人、女性は 6 人に 1
人は、がんで死にます
秩父市においても、40~74歳の死因の約4割が「がん」であります。
日本のがん検診は、昭和 58 年(1983 年)から老人保健法により対策型検診が開始されま
した。当初胃がん・子宮頸がんのみでしたが、順次追加され、平成 10 年に、胃がん、肺が
ん、大腸がん、子宮頸がん、乳がんの、いわゆる「5がん検診」の基盤となる「がん予防重
点健康教育及びがん検診実施のための指針」が策定されました。
その後、乳がん検診はマンモグラフィの導入、胃がん検診に胃内視鏡検査の導入、または
対象年齢の変更等、順次多少の検診内容の改定がありました。しかし、肺がん検診における
胸部単純 X 線撮影の如く、早期発見は無理である検査が、未だ実施されており、医学的に
見て、がん検診に大きな進歩は見られません。
胃がんは、その発生原因がほぼ判明し、予防や個人の胃がん発生リスクの判定も可能とな
ったにもかかわらず、被爆を伴うバリウム透視検査や、多少の苦痛やリスクを伴う内視鏡検
査が行われております。これは、費用対効果の面からも適切ではありません。また、リスク
検診(ABC 検診)が血液採取のみで済む、に対し、簡便性で劣り、受診率の低下にも繋が
っています。
近年、食の欧米化等に伴い、大腸がんが急速に増え続けています。日本人の死因の第 1 位
はがんであることは、周知の通りですが、直近のデータでは、男女総数の 1 位は肺がん、2
位は大腸がんです。女性の死因の 1 位は大腸がんであることは、多くの国民が知らないこ
とと思います。また、「膵臓がん」が増えていることも憂慮すべきことです。
国は「科学的根拠に基づくがん検診実施のための指針」を定め、市町村による実施を推進
しており、秩父市においても、これに沿って検診を実施しております。
現状のがん死の実態を直視すると、「科学的根拠に基づくがん検診」に疑問を感じざるを
得ません。現状の検診の無力さを感じます。
例えば、ピロリ菌感染が胃がんのリスクファクターであることは、数多くの基礎実験、臨
床研究により実証されており、1994 年世界保健機構(WHO)は、ヘリコバクター・ピロリ
を胃がんの確実発がん因子とし、B 型・C 型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、タバ
コやアスベストと同じ、最高の危険性を示す「グループ1」に分類されております。これは
「科学的根拠」であります。
中学生にピロリ菌検査を行い、陽性者を除菌する方法は、すでに複数の自治体で行われ
ています。これを全国的に行えば、20 年~30 年後には、日本から胃がんは無くなるであり
ましょう。
真の科学的根拠に基づき、科学・医学の進歩に即した検診が行われるべきであります。
国もこれは当然承知の上で、多少の指針の改正は行っていますが、大きな改善を行ってい
ません。国は、地域による医療水準の格差や地域的不平等、様々な問題を配慮し、「がん検
診」の方法はそれぞれの自治体の裁量によるとしていることは理解できます。しかし、費用
の問題なのか、官僚組織の慣例・医療行政の体質なのかわかりませんが、国の指針はあまり
にも緩慢で、かつ問題意識に欠けると言わざるを得ません。言い換えれば、「進歩のないが
ん検診の指針」を市町村に丸投げしているとも言えます。私は、国の怠慢と責任回避は否め
ないと考えますが、秩父市として、果たして、現状のままで良いのでしょうか?
すべてを理解した上で、秩父市には、市民のために可能な限り、「科学的根拠に基づく検診」
を実行してもらいたいと思います。
国民の医療費・市民の医療費を考える時、早期発見・早期治療・がん予防がどれ程の医
療費の削減に繋がるでしょうか。働き盛りの人たちが逝ってしまって、どれ程の生産性、エ
ネルギーが失われるのでしょうか。人の未来の喪失と社会全体の損失は想像もつかぬほど
大きなものです。『国策・市策としてのがん対策の充実』は喫緊の課題と考えます。
私の 50 年間の医師人生で、なんと多くの手遅れのがん患者さんを診たことか、悔しくて
なりません。
『現状の「がん検診」は医学・医療の進歩を活かしておらず、がんの発生現状・推移等を
全く考慮していないと言わざるを得ません』
一方、がん検診の受診率は低水準のまま、一向に向上しません。日本のがん検診の受診率
は国際的に極端に低く、目標が 50%にもかかわらず、アメリカ・イギリスの約 80%に比し
て、40%と低迷しています。そして、秩父市の受診率は全国の最低レベルです
『がんは早期発見、早期治療すればまず死なない病気である。原因が判明したがんもあり、
予防も可能となったがんもある』
このことを全市民に知ってもらう必要があります。
国も、地方自治体も、私を含む医療関係者も、市民に最大限の啓蒙活動をしてきたでしょ
うか?
今回、費用対効果と実現性も十分に考慮した上で、喫緊の課題である「大腸がん検診」と
「胃がん検診」について、現状の検査内容の改善、受診率の向上のための試案を提言します。
併せて、がんの経時的推移・傾向から、長期的視野に立った将来的提案を致します。
秩父市の施策が発端となり、少しずつでも日本中に広がり、がんや生活習慣病についての
知識、自身の健康についての意識が変わっていくことを願っております。
    がん検診の改善と受診率の向上に対する提言
1,がん検診の改善
1) 胃がん検診の検査方法を ABC 検診(リスク検診)へ変更
2) 特定健康診査・健康診査に大腸がん検診(便潜血検査)を加える
3) 大腸がんの急増を考え、便潜血検査の検査キットの配布は、現状の保健センターの
みならず、管内医療機関、調剤薬局、公民館等、適切と思われる多くの施設での配
布を可能とする
4) 大腸がん(便潜血検査)のための市の予算の増額
2,受診率の向上および啓蒙活動
1)秩父市に「がん検診の受診率向上」の専門部署を作るか、保健センターの職員の増
強等を図ること
2)秩父市立病院に「がん対策および啓蒙」の専門部署を設置すること
3)秩父市の広報による啓蒙
4)秩父 FM ラジオによる広報
5)SNS による広報
6)市民レベルの啓蒙
7)市役所の職員の啓蒙
8)議員の啓蒙
10)医療者の啓蒙
11)がん患者およびその家族のへの啓蒙
12)即時、秩父市の事業としての「がん検診」の予算の試算を行うこと
13)対策型がん検診以外のがん検診(人間ドッグ等の任意検診・職場検診の推奨・啓蒙)
14) 専門医師・保健師による、乳がんの自己検診(触診)を習慣づけるよう啓蒙・指導
を行うこと
15)専門家(医師・保健師等)による講演活動を頻回に行うこと
16)がん罹患者・経験者・抗がん剤治療経験者、そのご家族等の体験講演を行うこと
3,将来に向けて
1)中学生を対象のヘリコバクターピロリ菌検査の実施
2)必ず、次年度に、市秩父の「がん検診の予算」を増額すること
3)肺がん検診は胸部CT検査とすること
4)子宮頸がん検診に対するワクチン接種を再検討すること
5)便潜血検査は簡便性を生かし、毎年 1 回 40 歳以上の市民全員に行うよう努力する
こと。
6)定期的にがん専門医と意見交換をすること
以上、本提言に賛同頂いた方々の名簿をそえて提出いたします。
医療法人花仁会秩父病院 理事長 花輪 峰夫

『がん死の撲滅 5』花輪理事長の独り言(第22報)

『がん死の撲滅』5
戦略と戦術、考えれば考える程、虚しさが募ります。
昨日今日思い付いたことではありません。私の医者人生で、なんと多くの手遅れの癌患者さんを診て来たかことか!
『早期発見、早期治療』は全国民の知る標語とも言えるのに、現実は全く違います。
自己管理、啓蒙、本当に難しいことですね。
昨年4月以来、可能な限り多くの方達に、講演やメール、様々な集まり、飲み会の席等で、癌の脅威や、がん検診の大切さ、現状の『5がん検診』のお粗末さ、健康のありがたさを訴えてきました。
知事様、首長様達、市町・県会議員様達、県・市の医療行政担当の方達。
医師会の役員と会員、医療関係者、勿論、当院の職員と家族にも『至誠』の気持ちで、お話しして来ました。
半分以上は
『笛吹けど踊らず』『馬耳東風』でしょうか?
特にダメな人種は、『私を含む医者達』です。他人、他職種はともかく、医者はその為のプロ、人の健康・病を治す、あるいは防ぐために生きて行くべき職業人です。
ああ、情け無い、情け無い!
正直、結論をだすのは、早すぎる事は分かっています。根気強く続ける事が必要である事も分かっています。
しかし、今までの経験、日本の政治や行政の体質から、私の願いが叶うには、
歴史的年月か、地球規模の衝撃が必要と思っています。少なくとも、私が生きている内には解決しないでしょう。
当院では、まず私から『普通のがん検診』を始めました。冬の内に職員と家族に広げます。
草の根運動は『根』の続く限りやって行きます。
政治家の選挙の公約に『がん死の撲滅』が競って入り、これが票に繋がるまでになれば、嬉しいことです。
そうなれば、行政も変わるでしょうか?
お役人様達も本当の自分の役割、使命に気付くでしょうか?前例主義、事なかれ主義では、一歩も前に進まないのです。夢、理想はありますか?生き甲斐は何ですか?
私の『言い過ぎ』とお考えの方は、是非ともご意見、ご反論を頂きたいと存じます。
コロナ禍を経験して、私は一つ、大事な事に気づきました。大きな可能性、逆転の発想とも言えます。
私の持論、『コロナ禍は地球規模の戦争あるいは災害です。しかし、新型コロナ感染症は、病気としての怖さは、癌と比べると比較にならない程の軽い病気です。コロナは正に社会的大災害なのです』
以下にその根拠を示します。
2023年1月29日  日本のコロナデータ
感染者累計(約3年間)3243 万4189人
死者累計 (同上)    6万7680人
一方、癌は
2019年に新たに診断されたがんは999,075例(男性566,460例、女性432,607例)
2021年にがんで死亡した人は381,505人(男性222,467人、女性159,038人)
2009~2011年にがんと診断された人の5年相対生存率は男女計で64.1 %(男性62.0 %、女性66.9 %)
※(国立がん研究センター)
コロナと癌、大雑把に死亡率まとめると
コロナ   0.18%=1000人に1.8人
癌      38% =100人に38人
です。
こんなコロナ感染症が、何故地球規模の大災害となり、人々がこれ程、恐れ慄いたのか!!
それは、様々な思惑によるプロパガンダのためであったからに違いないのです。
良い、悪いを言っているのではありません。
多くの人々が萎縮する程の恐怖と関心を持ったことに注目したいのです。
『逆転の発想』
癌に対する啓蒙は極めてむずかしい事です。恐らく、癌は日常に普通にあることなので、インパクトがないのでしょう。
だからこそ、突然ふって湧いたコロナ禍の今こそが癌の怖さを再認識する絶好のチャンスと考えます。地球規模の衝撃を利用しない手はありません。
4日前、宝登山の蝋梅を見て来ました。久しぶりに神社にお参りしました。
熊高の森、私も植樹したことがあります。
秩父神社のライトアップ、寒いけれど、綺麗でした。

『がん死の撲滅 4』花輪理事長の独り言(第21報)

『がん死の撲滅』4
帰りの新幹線の中で戦略を練っています。
温泉、昔、家族でよく泊まった『高半ホテル』ではなかったので、湯の花もなく、懐かしい匂いはなかったですが、バライティーに富んだ、良い温泉でした。
私は小さい頃、ここ湯沢の布場ゲレンデでスキーを習いました。季節民宿旅館『銀線』が私の小学校から高校生の頃の常宿でした。
ここの、世話になったおじさんとおばさんは何十年か前に旅立たれ、私と同年代であった若主人も、癌で逝ってしまいました。
お線香を、と思い旅館の前までゲレンデを歩きましたが、何故かそのままUターンして湯沢駅に帰って来てしまいました。
すみませんでした。
湯沢を出て、新幹線の窓から谷川岳がはっきりと見えました。慌てて、カメラを取り出しましたが、時、既に遅しでした。
10秒くらいで、トンネルに入ってしまいました。
何も戦略を書けないうちに熊谷です。熊谷駅でトイレに寄ったら、なんと秒差で秩父線に間に合わず。そんな訳で、昼食、駅でカレーを食べています。
目的達成のための戦略
1,がん検診受診率の向上
2,検診内容、精度の改善
3,そのための啓蒙
4, 1〜4を誰か、どの様に実行するか
秩父線、揺れが激しく、中々上手く書けません。目が疲れます。
今、私に時間はたっぷりあります。ゆっくりと行きます。
しかし、始めないと、少しでも前に進まないと、永遠に目的地に着きません。
何故か焦ります。
吉田松陰の名言「夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に成功なし、故に夢なき者に成功なし」
私には荷が重い、疲れますね。

花輪理事長の独り言(第20報)

今、越後湯沢にいます。『国境の長いトンネルを越えると雪国であった』のそこです。新幹線ですので、トンネルは短く、もう川端康成が見た世界、私が幼少の頃見た世界はもうありません。ただ、国境の山々の風景だけは変わっていないはずです。
それと、温泉の肌触り!湯の花。
絞りたて八海山で、丁度良いあんばいになって来ました。そろそろ風呂に入ります。
少し休んで、『がんの撲滅』の戦略に入ります。応援して下さい。

『がん死の撲滅 3』花輪理事長の独り言(第19報)

『がん死の撲滅』3
敵(癌)を知り、次は己れを振り返らなければなりません。
1,健康に注意を払っていますか
2,タバコ、肥満、運動、食事は?
癌も生活習慣病気の一つです
3,健診や人間ドッグを受けていますか?
4,健診結果を生かしていますか?
5,要精密検査を放置していませんか?
6,職場の一般健診や健康診断などは『がん検診』ではない、癌は見つけられない事を知って下さい
7,癌は若い人にもあり得ることを知って下さい。30代でもあるのです
8,日本では、日本人に多い癌に付いて、『5がん検診』として、肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、子宮頚がん検診を行なっています
9,しかし、検診の内容は約40年間、ほとんど変わらず、医学・医療の進歩を活かせていません。本当にお粗末です
10, しかも、この検診の受診率は、欧米が70〜80 %であるのに対し、日本は40 %代です。ちなみに、秩父市は日本の中でも最低レベルです。
※ 『5がん検診』内容、精度等の詳細は後日、説明致します。
私は『隗より始めよ』にのっとり、今日自身の、『普通のがん検診』をしました。
結構、面倒で、不安もあったり、多少の勇気もいるものです。
順次、家族〜職員、医療者から皆さんに広げて行きます。
癌との戦いに勝つには、個々の意識、危機感、あるいは、如何に、自身の生き方への関心を持つか?ではないでしょうか。
正直、今私が癌検診をするより、より若い人達がやる方が、どんなにか意味があり、役に立つことか!?
病院の蝋梅、やっと咲き始めました。明日は、長瀞の宝登山に行ってみます。

『がん死の撲滅 2』花輪理事長の独り言(第18報)

『がん死の撲滅』2
癌(敵)を知りましょう。
ヤツの性格は最悪です。
1,初期は、まったく痛くありませんし、かなり進んでも自覚症状がまったくない場合が多いです
2,症状が出た時、多くは手遅れです
3,つまり、本人には、まったく気付かれずに進行します。本当に嫌なヤツです
4,癌の広がり方は、周囲や(浸潤)、肝・肺・リンパ節などに仲間を作ったり(転移)、癌細胞をばら撒いたり(播種)して進行して行きます
5,癌の種類や年齢により進行の速さには差はありますが
6,いずれの癌も最期は悲劇的です
7,見つけ易い癌、見つけ難い癌があります
8,原因が分かった癌もあります
9,予防できるようになった癌もあります
『癌は痛く、苦しく、助からないもの』
の概念は捨てて下さい。
癌は初期は全く痛くも痒くもないのです。
『症状の無いうち、早く見つければ、癌は治ります』

『がん死の撲滅』花輪理事長の独り言(第17報)

『がん死の撲滅』
どうすればいいのか?
がんとの戦争ですので、『敵を知り己れを知れば 百戦危うからず(孫子)』が的を得ていると思います。
今回は、まず、現状での戦果(戦禍)を知ってもらいたいと思います。
1,日本人の死因のトップは癌
2,一生の内二人に一人は癌に罹患します
3,男性の四人に一人、女性の六人に一人
4,つまり、約五人に一人は癌で死にます
5,女性の死因のトップは大腸癌
6,男性の死因のトップは肺癌
ちなみに、日本の新型コロナ感染者の3年間の累計死者は6万4000人弱(2023 年1月17日現在)
日本人の一年間の癌死者数は概ね37万3000人(2018年・国立がんセンター)
癌との戦い、どう見ても負け戦ですね。
『早く見つけさえすれば、癌ではまず死なないのに!』

31 ~ 40件 / 全177件

プロフィール
秩父病院理事長 花輪 峰夫

秩父病院理事長 花輪 峰夫

人と人との触れ合い医療を実践し、患者さんから信頼され、スタッフが気概を持って、地域に貢献できる病院を目指します。

記事カテゴリー
月別バックナンバー

PAGE TOP

秩父病院