花輪理事長の独り言
- 当院職員へのワクチン接種後の抗体検査について(2報)歯科部長:長谷川 義朗
当院では2021年3月から1回目の新型コロナウイルスワクチンの医療従事者の先行接種を開始しました。2022年1月までに3回目のワクチン接種を終了しました。ワクチン接種を行うと同時に職員の抗体価を測定しています〔協力 (株)秩父臨床医学研究所 検査方法: CLIA法・ロシュ社・SARS-CoV-2抗体(S)IgG定量・判定基準50.0未満 (AU/ml) 〕。
1回目の測定は2回目のワクチン接種から9〜10週間後、2回目の測定は2回目のワクチン接種から22〜24週間後、3回目の測定は2回目のワクチン接種から33〜34週間後、4回目の測定は3回目のワクチン接種から4〜5週間後に行いました。
結果を図1に示します。
グラフは各年齢層(20〜29歳、30〜39歳、40〜49歳、50〜59歳、60歳以上)に分けてそれぞれの平均値をグラフにしています。対象は70名で未感染の職員です。
2回目の接種後から時間が経過するにつれ抗体価は減少しました。各年齢層で差はありますが3回目の測定の結果は1回目の測定の結果の10%〜30%まで減少しました。しかしながら3回目のワクチン接種後は1回目の測定結果の200%〜500%と大きく上回りました。これはいわゆるブースター効果と考えられます。
60歳以上の層では他の年齢層と比較して抗体価の平均値は低値を示しまた。また、全年齢層で抗体価の個人差は大きく出ました。20代でも抗体価が低い人、高齢でも抗体価が高い人それぞれいました。
昨年8月に当院の病棟でクラスターが発生しました。残念ながら職員数名が感染してしまいました。しかしながら2回目のワクチン接種を終えていたので症状は軽症でした。抗体カクテル療法を行い、入院治療することなく治癒しました。この時期はワクチン2回目の接種から18週間ほど経過した時で2回目の抗体価の測定を行う前です。抗体価はそれなりに低下し始めている頃だと思われますが、軽症で済んだ要因の一つがワクチン接種による抗体の獲得であると考えられます。
今後考えられることは、ワクチン接種を終えていれば重症化はまぬがれるということと、多くの人がワクチン接種で抗体を獲得すれば、集団免疫が獲得でき、結果としてコロナ感染者が減少するだろうということです。3回目のワクチン接種後の抗体価の上昇は大きいです。 いち早く多くの方々へ接種が進むよう努力いたします。
(文責 院長 花輪峰夫)
- 今年(2022年)に入ってからのオミクロン株感染患者治療の経験と印象
- 感染者の急増の割には、感染者の入院が少ない
- 入院患者は、ほとんどが超高齢者か重篤な基礎疾患を持つ方
- 感染しても軽症、無症状の方がほとんどである。オミクロン株でもコロナ肺炎像を呈した症例が3例あった。この内2例はワクチン未接種、1例はワクチン1回接種であった
- 入院患者は老人施設からの方が大半であり、介護度は高く、看護・介護は以前とは比べものにならない程大変である。
- 診察あるいは入院時、治療薬投与の時間的条件(発症後5日以内)を過ぎている方が大半であり、自宅療養中の詳細な観察が重要であり、治療薬が宝の持ち腐れにならない対策が必要である
- 老人施設等でクラスターが発生した場合、感染者はできるだけ初期に治療薬の投与が必要と思われる。この場合、経口薬は無理な場合も多く、注射薬(ソトロビマブ等)の投与が有効であろうと思われる。そのためには、施設や嘱託医、診療所、コロナ治療医療機関の連携が急務と考える
オミクロン株感染についての感想・考察
総じて、重症化する方は少ない。軽症、無症状の方がほとんどである。従って、実際の感染者は発表されている数を大幅に上回っていると考えられる。最近では、発熱外来での抗原・PCR検査の陽性者が半数近くに上る日もある。感染者の入院患者数は感染者数に比例する程は増えていないことは、オミクロン感染は重症化することが少ないことを裏付けている。
報道は、重症化・死亡に至る方が増えていると危機感をあおるが、私にはそれらが極端に多くなっているとは思えない。高齢者が感染すれば若者より重症化リスクが増すことは当然であり、基礎疾患が悪化しても全く不思議ではない。高齢そのものがリスクであると言って良い。死に至る方は超高齢者か、又はかなり重篤な基礎疾患を持つ方が大半と推察する。医者が言ってはいけないことかも知れないが、人は歳を重ねれば必ず死ぬのである。オミクロン株に変わった現在、高齢のコロナ感染者の死は、多くの場合コロナ感染が直接の原因ではないと思っている。様々な意見があろうが、『コロナは怖くない、さらに、オミクロンの感染力は強力であるが、重症化はせず。重症感染症とは言えない。さらに、今までのワクチン接種の効果もあり、感染しても大事には至らない。従ってオミコロンは怖くない』が肌で感じている私の実感である。癌、脳卒中、心臓病、重症外傷と比べれば、何をそれ以上に恐れることがあろうか。
3回目の追加接種
当院職員の内、ワクチン3回目接種後に感染した職員が3人いる(いずれも院内感染ではない)この内2人は無症状、1人は軽症~中等症であった。家族感染であった事例では、3人の幼児は当然ワクチン未接種であったが、微熱、鼻水等風症状のみ・。配偶者は2回接種後で当院職員は3回接種後であった。症状は配偶者により強く発現したと言う。
ワクチン3回目の追加接種の効果はどれ程のものかは現時点では不明であるが、冒頭の如く、3回目の追加接種後の抗体価の上昇具合から推察すると、大いにその効果、特に重症化阻止効果に期待できると思われる。
昨年の第5派が収まった、10・11・12月になぜ早く準備し、より早い追加接種が出来なかったのか悔やまれてならない。当初言われていた、2回目接種よりの8ヶ月接種間隔としたのは、ワクチンが手に入らなかったためなのか?今となっては3ヶ月未満でも良いのではないか?サンプルでも継時的に抗体価測定を行う必要があったのではないか?接種券に縛られていたのではないか?医師や看護師等の接種スタッフの確保の問題か?不満と疑念は残る。昨年来の反省が生かされていない、全く進歩していないと思う。
今、やるべきこと
私は日本が取ってきた今までのコロナ対策の全てが間違いであったとは決して思わない。むしろ、総じて良くやって来たと思っている。しかし、3回目の追加接種が著しく遅れていることは事実、すでに第6派には手遅れである。水際対策は追加接種が行き渡るまでの時間稼ぎ、は理解できた。しかし、思惑通りに行かなかった現状を真摯に見つめるべきである。次の変異株の流行に向けて追加接種は必要との、言い訳じみた意見も多少は理解できるが、追加接種率が低いとの理由で様々な規制を解除しないことは誤りであると思う。状況は刻々と変わっているのである。経済は低迷し、社会と人の心は今や鬱の世界に入り込んだ。しかし『元々怖くなかったコロナウイルス自体もさらにマイルドなオミクロン株に変わった』のである。
『今や、コロナ感染症はインフルエンザと同等の対処をすべき』と考える。
高齢者に対する感染防止措置は重要であるが、規制の強化、蔓延防止措置の拡大・延長は今となっては大きな意味を持たないと考える。
救急車の受け入れ困難事例は今最大の問題となっているが、その原因は、コロナ感染者の入院病床確保のために病床が無い、あるいは病院スタッフが感染または濃厚接触者となり勤務できず、病院の本来の機能が維持できなくなっていると聞く。私は、秩父地域ではそこまでの状況との認識はないが、コロナ以外の急性重症患者が満足な治療を受けられず、不幸な結果となることは当然あり得ることである。当院の実際を見ても、発熱外来を含むコロナ感染者の診断・見分け検査のため、一般外来機能は大きく制限されている。入院治療についても、感染患者の隔離や特別な感染予防対策が必須であり、通常の入院治療、手術日程等にも少なからず影響を及ぼしている。また、がん検診や人間ドッグ等についても検査を控える傾向があり、早期発見・早期治療の原則が脅かされている。この原因の多くが、国や行政の柔軟性を欠いた根本的対策、実行の遅さ、優柔不断にあることは間違いない。医療逼迫も社会不安もこれら失策が作り出したものと思えてならない。
私は、今の世間の空気感・風潮は是非とも変えなければならないと思う。規制・自粛の時期は過ぎたと感じる。今は国民に夢と希望を与える時である。重ねて言うが、以前は有効であった、脅かしによる自粛と規制強化による感染予防、この「プロパガンダ」とも言うべき施策は、今は意味を持たないと考える。
『ワクチン接種と自然感染による集団免疫の獲得』に舵を切る時である。残念ながらそうせざるを得ない状況に陥ったとも言えるが、それでなければ我々の心は萎縮し希望を失い、日本は世界から取り残されてしまうであろう。
登山でも航海でも、決断できないことは遭難に繋がる。
コロナに関わっている医療者として、敢えて両方向(規制か緩和)のリスクは承知で、医療専門家と称する人達や政治家が発言しないであろうことを訴えたい。正に決断の時『潮時』である。今は、次への準備をしつつ、『マイルドオミクロン株』に賭けるしかない。
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