秩父の医療について再びお話しします
以前にも投稿しましたが、秩父の医療にとって非常に大事なことなので、改めてお話しします。
市民の皆様には、是非とも知っていただき、ご理解賜りたいと思います。
地域の医師不足解消対策として、多くの県が行っている大変有効な制度があります。
埼玉県でも『埼玉県医師育成奨学金』制度として実施しています。
これは国も推奨している制度で、
「医師免許取得後、埼玉県内の、県が定める医師不足地域の『公的公立病院』に9年間勤務すれば、奨学金の返済を免除する」
というものです。
※ 詳細は『埼玉県医師育成奨学金』で検索してください。
私は2022年11月25日、大野埼玉県知事と県議会議長に、42医療機関の賛同書を添えて、
『民間病院の勤務でも、条件を満たせば、返済免除』となるよう改善要望を致しました。
以下、その時点でのFacebook投稿文と、毎日新聞の記事を再掲します。
振り返ってみると、12年前、私が秩父郡市医師会長であった時期にすでに、
埼玉県医師会と県保健医療部に対して『地域の医師不足に対する提言』を行い、審議検討をお願いしていました。
医師の地域偏在・診療科偏在については、学会等でも何度か発表しています。
これらは、今回、資料として知事等に提出しました。
また、今回の奨学金制度についても、3年前の『秩父医療協議会』で、
「奨学金返済免除指定病院が公的公立病院に限られること」について納得できず、県に回答を求めていました。
県の説明は次の通りです。
この制度は条例・規則を制定して運営している
その原資は埼玉県全体の税金で賄われている
公的医療機関は地域を担う中心的存在である
不採算医療を担っている
しかし、私には全く理解できない、現場からかけ離れたものと感じています。
さて、2025年4月現在、私が地域の医師不足の危機を訴え始めてから、実に15年以上が経過しました。
しかし、地域の医師不足は悪化の一途をたどり、地域医療は崩壊寸前にまで至りました。
昨年末には、
NHKクローズアップ現代、読売、毎日、産経、東京新聞などから取材を受け、現場の実情をありのままに話しました。
秩父に限らず、医師の偏在による地域医療崩壊の危機は明らかです。
にもかかわらず、埼玉県医師育成奨学金制度の改善はなされていません。
県の空気として、
改善要望には地元医療者からの要請が必要
邪魔をしている存在がいる
大野知事の記者会見で「秩父の医療には何の問題もない」と発言
こうした否定的な情報が耳に入り、私は正に疑心暗鬼の状態に陥りました。
すでにお話ししましたが、
今年1月末、上記奨学金の件について「秩父郡市医師会から知事に要望してほしい」と医師会理事会に判断を求めました。
しかし、採決の結果、多くの理事たちが反対票を投じ、否定されました。
私にとっては大変なショックでした。
仲間に裏切られたようで、悲しく、悔しい思いでした。
「なぜ?」
これがその時の正直な気持ちであり、今でも絶対に納得できていません。
『埼玉県医師育成奨学金制度の目的は、本県の地域医療における医師の地域偏在・診療科偏在を解消する』とされています。
秩父地域に限らず、地域の医師を確保するには、現時点ではこの制度に頼るしかありません。
秩父について言えば、現在まで、
二つの自治体病院に奨学金貸与者の派遣がないことから、
秩父病院のような民間病院も対象にしなければ、地域医療は間違いなく崩壊します。
当院独自の医師確保の試みは、すべてやり尽くしました。
民間病院には、秩父市立病院のように自治医科大学卒業生の自動的な医師派遣もなく、
奨学金免除指定病院でもないため、奨学金適用医師が秩父の民間病院に来ることはありません。
独自の努力で医師確保をするしかないのです。
2025年3月31日をもって、夜間二次救急輪番は残念ながら離脱せざるを得ませんでした。
断腸の思いです。
ただし、昼間の救急診療(救急車の受け入れを含む)は、これまで通り行います。
救急病院を辞めるのではありません。
この点について、ぜひご理解いただきたいと存じます。
市民の皆様へ
医師不足による医療崩壊の危機、
そして公民の不平等について、是非ともご理解賜りますようお願い申し上げます。
秩父市長選挙が近づいてきました。
お二人の候補とも、市立病院の建て替えをうたい、特に清野氏は秩父の医療を最重点政策としています。
今回の選挙は、今まで以上に、医療問題が市民の関心を集めるに違いありません。
私は、50年以上秩父の医療に携わって来た医師として、医療が票集めのための道具に使われることを心配しています。
ですから、市民の方々に、秩父の医療の実情をお知らせすることが、私の役割と考え、思うところをお話しさせていただきます。
まず、全国的に言えることは――
1. 地方の深刻な医師不足
医師は都市部に集中し、地方の大学でさえ医師は不足しています。(地域偏在)
2. 若い医師の志向の変化
美容外科を志す医師が増え、地域医療に必要な外科、内科、小児科、産科、救急科などは非常に少なくなっています。(診療科偏在)
3. 医療の専門特化
深く狭い領域の診療しかできない医師が増えています。
4. 医療の急速な進歩
かつて高度先進医療とされたものも標準的医療となり、複数の専門医とスタッフ、高額な設備・機器が必要となっています。
5. 緊急重症疾患への新たな対応
近年、埼玉県では脳卒中や心筋梗塞などの患者を、救急車が現場から直接圏外の専門病院に搬送する素晴らしいシステムが始まっています。
6. 建設費の急騰
病院建設に限らず、急激に建築費が高騰しています。
市民の皆様、冷静に考えてください。
医師不足の秩父地域では、どんな医療をやるべきでしょうか?
私はこう考えます。
この厳しい環境下では、秩父市立病院に限らず、高度医療や身の丈を超えた医療は、残念ながら無理、やるべきではありません。
経営収支や医師確保の見通しも無く、強引に箱物だけを作ったとしたら、秩父市と市民にとって最悪の結果になることは火を見るより明らかです。
まず、現状を見ることからはじめる必要があります。
建て替えをうんぬん言う前に、
赤字経営の改善
運営体制の見直し
スタッフの意識改革
ビジョンの醸成
まず、こうしたソフト面の見直しをすべきだと思うのです。
そして、連携を強化すること。
それも、秩父郡市内にとどまらず、埼玉県単位、さらに県境を越えた連携が必要です。
これには、人と人の絆に基づいた約束からシステム作り、契約まで結ばなければならないでしょう。
その上で、医師を含む人の交流・派遣・人事まで、
公立・民間の区別のない、意識改革を伴う、連携を超えた新しい運営体制の新病院を作ったらどうでしょうか。
これは、過去にも例を見ない、大変むずかしいことだと思います。
ですが、それしか道は無いと私は思います。
立春も過ぎ、アトムとの散歩道には、蝋梅の香り、今日は福寿草が咲いていました。
季節は確実に春へ向かっていますが、私は冬の真っ只中です。
数年来の「地域の医師不足解消」への取り組み、特に2年前に大野知事に要望した「埼玉県医師育成奨学金の返済免除における公民の差別の解消」は、全く進展しません。
昨年末には、NHKクローズアップ現代、読売、毎日、産経、東京新聞の取材を受け、現場の実情をありのままに話しました。
秩父に限らず、医師の偏在により、地域医療が崩壊の危機にあることは明らかです。
今年1月末、上記奨学金の件について「秩父郡市医師会から知事に要望してほしい」とお願いしました。
このことは2019年の「ちちぶ医療協議会」以来、望んでいたことであり、最近も何度か医師会にお願いしていました。
結果は残念ながら、「否」でした。
ショックでした。悲しく、悔しいことでした。
「何故!?」が私のその時の正直な気持ちであり、今でも納得できません。
しかし、あれから数日経ち、もう秩父郡市医師会に私のいる場はないと痛感しました。
私のような、行政や知事に文句を言う者は、宜しくないのでしょう。
医師会の仲間に、こんなにも嫌われていたのかと思うと、情けない気持ちでいっぱいです。
「不徳の致すところ」――今の私にとっては、この言葉がふさわしいのかもしれません。
ただ、これだけは言えます。
『埼玉県医師育成奨学金制度の目的は、本県の地域医療における医師の地域偏在、診療科偏在を解消する』
確実に、秩父地域に限らず、地域の医師を確保する方法は、現在この制度に頼るしかありません。
秩父について言えば、現在まで二つの自治体病院に奨学金貸与者の派遣がないことから、
秩父病院のような民間病院まで対象とならなければ、地域医療は間違いなく崩壊します。
当院独自の医師確保の試みは、すべてやり尽くしました。
来年度からは、夜間二次救急輪番は残念ながら撤退せざるを得ません。
断腸の思いです。
ただ、昼間の救急診療は、救急車の受け入れも含め、今まで通り行います。
救急病院を辞めるのではありません。
市民の皆様には、ぜひともご理解のほどお願い申し上げます。
2025年2月4日 秩父病院 花輪 峰夫
11 ~ 20件 / 全227件