秩父病院での地域研修を終えて

2018年4月

「地域医療」という言葉で私が連想していたのは、1、2人の医師が訪問診療や緩和ケアなどを行っている比較的のんびりとした病院といったものでした。 4月2日病院に着くと、まずその建物の広さ、きれいさに驚きました。 大学並みの検査設備が整い、ヘリポートも完備、病棟も明るく清潔です。 そして当番の日にはCPAや意識障害なども次々来るような、勢いのある活気溢れた病院でイメージが覆りました。

大学では、診療科・専門が細分化されています。何かあれば専門の医師に相談できるというのは心強いですが、 患者さんを複数の科・複数の医師で診ることになり、混乱も多いです。

また、専門外のことは他科に任せてしまいがちで、どんどん専門外の知識や経験が不足していってしまいます。 一方で秩父病院では、多種多様な訴えの患者さんを数人の医師で診ており、「地域医療」の本来の意味、本来の在り方を目の当たりにしました。

秩父病院のような地域の二次救急病院に求められているのは、専門性の高さではなく、いわゆる「まちのお医者さん」のようななんでも診られる 総合力だということを痛感しました。

「まちのお医者さん」と言うのは簡単ですが、それを本当にこなせるための知識・経験は膨大だと思います。 大学にいては到底身につかないものだと感じました。

都会の若者であれば、専門性の高い最先端の病院での治療を望むかもしれませんが、秩父で生まれ育った高齢者にとっては、 この秩父病院で検査から診断、治療、術後管理までやってもらえるというのは、とても心強いでしょう。 また、地域を自分たちが支えているといった、スタッフの方々の共通の思いは、東京には絶対にないものであり、羨ましくもありました。

都内の大学で学び、そのまま大学病院で研修をしている私たちは、本当に井の中の蛙でした。 とにかく特殊な環境に慣れてしまっていること、日本の医療を支えている大部分は、秩父病院のような地域の病院であるととを思い知らされました。 まずは現在の環境で身に着けられることを精一杯学び、いずれは秩父病院などで地域医療を総合的に担える医師になりたいと思いました。 そんな医師になれるよう、今後も精進していこうと身を引き締めました。

最後に、院長先生をはじめ、外科はもちろん内科の先生方にも毎日ご指導して頂き、大変感謝しております。 1か月という短い期間でしたが、数多くの知識・技術を教えて頂きました。ありがとうございました。